住宅の購入や賃貸契約の際に加入を迷う火災保険。実際に被害に遭った人でないとその必要性はなかなか実感できないものです。そうは言いながら毎年報道される台風の被害や現在に至っても復興への努力が続く東日本大震災の津波被害など、自然災害への備えを考える機会は増えているのではないでしょうか。
備えとしての火災保険は自然災害に対してはどの程度の範囲が補償されるものなのか、地震保険の補償範囲などについて解説します。
目次
ニュースを賑わす自然災害

阪神大震災、東日本大震災と壊滅的な被害をもたらした大地震や例年のように衝撃的な映像が報道される台風による水害、死傷者が出る火山の噴火など、自然災害は全国各地でその爪痕を残しています。
テレビの報道のようすなどを見ていても、災害に対する意識は一昔前に比べると一段と高まってきているのではないでしょうか。
実際に自然災害と火災の被災規模を比べてみると、
年次 | 自然災害による り災世帯数 | 火災による り災世帯数 |
---|---|---|
2010 | - | 46,620 |
2011 | 243,898 | - |
2012 | 17,048 | - |
2013 | 8,392 | - |
2014 | 8,442 | - |
2015 | 10,422 | 39,111 |
2016 | 85,190 | 36,831 |
「第68回日本統計年鑑 平成31年 第29章災害・事故」より抜粋
火災による り災世帯数は4万台から3万台と減少傾向が見られますが、自然災害は東日本大震災のあった2011年には24万世帯、熊本地震の2016年には85,000世帯と一つの大規模災害が大きな損害をもたらしていることがわかります。
自然災害の種類と被害の対象

日本は自然災害の多い国と言われます。年間を通じて気象が要因となる災害が起こり、それに加えて年間2,000回以上の地震が起こっています。自然災害にはどんな種類があるかを見ていきます。
自然災害の種類はどんなものがあるのか
一口に自然災害と言っても台風や豪雨など気象がもたらすものと地震や津波といった地殻変動によるものに大別できます。
自然災害と言われるものは、以下のように分類できます。
分類 | ||
---|---|---|
気象 | 雨 |
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風 |
|
|
雷 |
|
|
気候 |
|
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地殻変動 | 地震 |
|
噴火 |
|
自然災害によって被害が及ぶもの
火災や自然災害により損害を受けるものは、建物、家財、自動車、人が考えられます。このうち火災保険と地震保険が補償の範囲とするものは建物と家財です。
自宅ガレージが延焼して車両火災が発生したケースや水害により自家用車が水没したといった場合には車両保険が補償することになります。また、火災や地震が原因で負傷した場合は傷害保険が補償をカバーします。
災害保険がカバーする自然災害はどんなものがあるか

火災保険でも水害や台風などの被害が補償されますが、地震が原因となる火災は地震保険に加入していないと補償されません。それぞれの補償範囲を知っておくことが大切です。
火災保険
火災保険は、自宅から出火した場合のほか、隣接する住宅が火元となる火災により自宅が延焼した場合も補償の対象となります。失火による火災のほか、落雷による火災や家財の損傷、台風による暴風雨や積雪、雹による建物の損壊、洪水・高潮による建物の浸水など、落雷、風災、雪災、水災といった自然災害による被害も火災保険の補償範囲です。
自然災害のほかにも漏水や水濡れ、ガス漏れによる破裂・爆発、盗難被害と合わせた建物の損傷や汚損、物体の落下・飛来・衝突による損壊、さらには、騒擾や集団暴力による破壊行為といったものも火災保険の補償範囲に含まれます。
直接の損害以外にも、火災や災害後の後片付に係る費用や消火活動に対するお礼の費用、水道管凍結時の修理費用や建物・家財の損害補償以外の臨時費用が支払われるものなど、費用保険が火災保険のプランに含まれるものもあります。
これらの補償は一律に支払われるものではなく、補償の範囲と対象を選べるのが一般的であり、台風被害の多い地域や豪雪地域など被災する可能性のある災害に合わせて保険商品のプラン設計を行います。
火災保険と地震保険の最も重要な違いとして、地震が原因となる火災は火災保険では補償されないという点です。
地震保険
地震保険は地震、津波、火山の噴火による建物の火災、損壊、埋没、流出といった被害を補償するものです。地震が原因となる火災や延焼は火災保険の補償の対象ではなく、地震保険でカバーすることになります。
地震保険は民間保険会社が負う保険責任が一定額以上になった場合、政府が再保険する仕組みが取られていることから制度上一律の基準が設けられています。
地震保険は単独で加入することができず、火災保険加入者のみが保険に入ることができます。補償対象は住居用の建物と家財に限られ事務所用建物等は対象外です。また、30万円を超える貴金属・宝石・骨董・有価証券、自動車なども保証対象外とされています。
法令違反や重過失が認められる場合、地震発生日から10日以上経過した後の損害、紛失・盗難の場合も保険金を受取ることはできません。
地震保険の制度上、保険金は建物5,000万円、家財1,000までの上限が設けられていること、保険金は火災保険の最大50%までといったことが定められています。
自動車保険
前に触れたとおり、火災や自然災害が原因で自動車が損害を受けた場合には自動車保険による補償を受けることになります。一般的に車両火災や水没といった災害に起因する車両の損害は車両保険の補償範囲に含まれており、車両保険に入っていれば補償されます。さらに特約の中に災害による損害の場合の一時金が出るものなどがあるので、保険を選ぶ際は商品の内容をよく調べることが大切です。
地震または噴火による車両火災の場合は補償されない点に注意が必要です。特約のなかに地震や津波、噴火の場合の車両全損一時金といった付帯があるケースもあり、その場合は原因が地震の場合でも全損した場合に限り補償が受けられます。
補償の範囲や特約の内容を把握しておく

保険販売各社の火災保険のプランは建物、家財それぞれに対して、補償される災害の種別を選択する形でプランの申し込みを行います。基本となる火災、落雷などが基本プランとしてセットになり水災や風災などをオプションとして選ぶといったものもあります。
火災保険の費用補償のなかに「地震火災費用保険金」というものがあります。地震火災という名称なので地震の時の火災に適用されるもののような印象を受けますが、建物が半焼以上、家財が全焼した場合に限り保険金額の5%が支払われるというもので、損害全体をカバーできるものではありません。
法律上、出火元であっても隣接する住宅が延焼した場合に損害賠償責任はありませんが、「類焼損害特約」を付ければ、被害を受けた住宅所有者に保険会社から直接保険金が支払われます。
このように、火災保険は細かい補償範囲の区分や特約などがいくつもあるので、具体的にどのような被害を受けた場合に、何がどこまで補償されるのかを知っておくことが重要です。
災害保険を受け取った場合の税金

火災保険や地震保険の保険金は損害を補填することが目的であり、利益が生じたわけではないため、いずれの保険金も非課税です。
被災した損害額に対して保険金では足りない、少なすぎる、そもそも保険に加入していないといった場合は、確定申告で雑損控除を利用し所得税を減免してもらうことができます。
災害減免法も税金の減額申請をできる制度で、所得が1,000万円以下の場合、住宅・家財の時価の半額以上の損失がある場合に所得税の免除または減免を受けられるというものです。
所得税と控除については以下の記事もご覧ください。
この記事の情報は2019/10/10時点のものです。
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