初めて給与明細を目にしたとき、厚生年金の金額に驚いた覚えがある方はいませんか?
今回はそんな厚生年金について、支払う理由やメリット・デメリット、支払金額から将来の受給額の計算方法まで詳しく解説します。
これから働き始める人、今後受け取る額が気になる人は必見ですよ。
目次
そもそも厚生年金ってなに?

厚生年金とは、会社に属するサラリーマンやOLなどが支払う年金のことです。
厚生年金の加入手続きや支払いは会社が代行してくれるので、普段はあまり意識していない方も多いでしょう。
しかし、初めて働き始めた方が
「想定していたよりも給料が安いなぁ」
と感じるのは社会人あるあるではないでしょうか?
このなぜか安い給料の理由のひとつとして、厚生年金の存在があるのです。
年金といえば、厚生年金の他に国民年金があります。
では、厚生年金と国民年金にはどのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。
厚生年金と国民年金の違い

まずは、下記の表をご覧ください。
厚生年金 | 国民年金 | |
---|---|---|
対象者 | パート・アルバイトを含む会社の従業員 (条件有り) |
20歳~60歳までのすべての国民 |
支払方法 | 給料から天引き | 郵送されてきた納付書を使用 |
支払額 | 給料による | 毎年異なる |
受給額 | 支払い期間と金額による | 支払い期間による |
厚生年金と国民年金では、さまざまな部分で異なることがわかりますね。
特に特徴的なのが、各対象者についてです。
厚生年金は前述のとおり、会社で働く従業員に対して設けられた年金制度です。
雇用形態は正社員だけでなく、パートやアルバイトでも対象になる可能性があります。
ただし、厚生年金に加入するためには一定の条件を満たす必要があるため、
「短時間で働いて、適当に厚生年金を払っておこう」
ということはできません。
詳しい条件に関して知りたいという方は、下記のリンクからご確認ください。
一方、国民年金の場合には20歳を超えればすべての国民に等しく支払い義務が生じます。
国民年金は基礎年金とも呼ばれ、名前のとおり将来の年金の基礎となるお金です。
厚生年金を支払っている人は、それにプラスして基礎年金分を支払っています。
そのため、国民年金だけを支払っている人(第1号被保険者)よりも、月々の支払金額が高くなります。
厚生年金のメリット・デメリット

国民年金だけでなく厚生年金を支払うことは、どのようなメリット・デメリットがあるのか確認してみましょう。
メリット
厚生年金によるメリットは、主に以下の3点です。
- 将来受け取る年金が増える
- 半額は会社が負担してくれる
- 遺族年金の幅が広い
上記のうち、特に重要となってくるのが将来の年金額。
国民年金に上乗せして厚生年金を払っているため(これを『二階建て』と表現する)、その分受給額が多くなるのです。
受給額の詳しい計算方法は後程ご紹介しますが、平均受給額は国民年金が約5万円、厚生年金は男性約16万円・女性約10万円だといわれています。
デメリット
メリットの多い厚生年金ですが、その一方で以下のデメリットも存在します。
- 給料から差し引かれる
- 対象外の可能性がある
厚生年金の対象者の場合、将来的には安定しますが支払い期間中は給料の手取り額が減少します。
対象者の場合は必ず加入しなければならないため、給料が少なくなると不満に感じる人もいるでしょう。
反対に、厚生年金に入りたくても条件が満たせずに加入不可となる可能性もあります。
将来に備えて厚生年金への加入を希望するのであれば、条件を満たせる働き方にできないか上司に相談してみましょう。
厚生年金の金額はいくら?

ここからは、厚生年金の支払額と受給額について詳しくご説明します。
支払額の計算方法
厚生年金の月々の支払額は、以下の計算式で求めることができます。

計算式内の各単語については、以下をご参考ください。
計算が苦手という方や手軽に調べたいという方は、下記のサイトがおすすめです。
報酬月額
会社から支払われる給料のことを報酬月額といいます。
つまり社会保険料等が差し引かれ、かつ住宅手当などの各種手当が含まれた総支給額のことですね。
普段意識するのは、こちらのみという方が多いでしょう。
標準報酬月額
報酬月額を区切りの良い額にしたものを、標準報酬月額といいます。
この額は毎年4月から6月の3ヶ月間分の報酬額をもとにしており、その年の9月に算出されます。
標準報酬月額の区切りに応じて等級が定められており、その枠は1~31等級までです。
標準報酬月額(もしくは等級)が分かれば、あとは保険料率をかけるだけ。
保険料率は年度や厚生年金基金に加入しているか否かで異なるため、日本年金機構の保険料額表を参考にしてください。
標準賞与額
賞与を受け取った場合には、通常の月額給料とは別枠で保険料を算出します。
標準賞与額は、1回あたりの賞与支給額の1,000円未満を切り捨てた額です。
標準賞与額に保険料率をかけると、賞与の支給時に差し引かれる厚生年金の額を調べることができますよ。
会社によっては1年の間に4回以上の賞与を受け取る場合もありますが、4回目以降は月額報酬として換算されます。
この場合には芳醇報酬月額が適用されるので、計算時に注意が必要です。
ワンポイント
会社によっては1年の間に4回以上の賞与を受け取る場合もありますが、4回目以降は月額報酬として換算されます。
この場合には標準報酬月額が適用されるので、計算時に注意が必要です。
受給額の計算方法
将来のことを考えると、気になるのが厚生年金の受給額です。
では実際に受け取れる額はどのくらいになるのか、計算する方法をご紹介します。
受給額の計算式は以下のとおり。

それでは、こちらの計算式に出てくる単語についてさらに詳しく見ていきましょう。
ちなみに、受給額についても簡単に調べたいという方には以下のサイトがおすすめです。
報酬比例年金額
報酬比例年金額は、標準報酬月額をもとに算出できます。
ただし、注意しなければならないのが給料を受け取っていた期間により標準報酬月額の内容が異なることです。
平成15年3月までが月額の給料のみ。
4月以降からは、月額の給料に賞与がプラスされます。
報酬比例年金額を算出する際には、厚生年金の加入時期をよく確認しておきましょう。
変更期間をまたぐ場合には、それぞれ計算する必要があります。
経過的加算
定年が年々延長されている現代、国民年金の支払いが終わる60歳以降も厚生年金の支払いは続くという方も多いでしょう。
あるいは、国民年金が義務となる20歳よりも前に仕事を始める方もいるかと思います。
このように20歳未満60歳以降に厚生年金の支払いをした期間は、老齢厚生年金として加算されます。
この加算方法のことを、経過的加算というのです。
ただし経過的加算は480ヶ月までが上限のため、超過した分に関しては加算できません。
加給年金額
厚生年金には、特別な条件を満たしたときに支給される加給年金額があります。
加給年金を受け取る第1条件は、被保険者が65歳になり、厚生年金に20年以上加入していること。
かつ、受け取るための条件として以下の3点を満たす場合です。
- 配偶者が65歳未満であること
- 18歳以下の子どもがいる
受給額はそれぞれ異なり、配偶者の加給年金額は配偶者の年齢に応じて段階的に設定されています。
詳しい金額は、下記の表でご確認ください。
対象者 | 加給年金額 |
---|---|
配偶者 | 22万4,500円 |
子ども(1人目・2人目) | 22万4,500円/人 |
子ども(3人目~) | 7万4,800円/人 |
厚生年金の金額は勤務状態によって異なる

厚生年金の支払い額および受給額は、今回ご紹介した計算式で求めることができます。
今現在働いている人は、月々の厚生年金の支払いで給料が少なくなると不満を感じている方もいるでしょう。
実際に、TwitterなどのSNSサイトでは下記のような口コミも多く見られます。
給料明細を見たときに、差し引かれた額を考えるとこうした声が出るのも仕方がないでしょう。
給料が低ければその分月々の貰える額が下がり、反対に給料が高ければ差し引かれる金額が高くなります。
しかし厚生年金の支払いは会社員の義務であり、将来のための保険です。
個人的に嫌だと感じても支払いを避けることはできません。
ただし、一時的に厚生年金の支払い免除を受けられる期間があります。
それは、産休と育休の取得期間中。
この期間は就業をストップしているため、収入がない状態となります。
その状態では厚生年金の支払いができないので、期間中は厚生年金の支払いもストップしてもらうことができるのです。
厚生年金のほかにも、産休中や育休中には各種手当などを受け取るチャンスもあります。
詳しくは下記のページでご紹介しているので、ぜひご確認ください。
記事内の情報は2019/10/10時点のものです。
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