話題として取り上げられることはあるものの、普及に向けての兆しも不透明な仮想通貨。銘柄の種類も多く、価格変動も大きいことから投資商品としても手を出しづらいのが実態です。
仮想通貨がより身近になるにはもう少し時間がかかりそうですが、決済手段としての活用やブロックチェーン技術を応用する取り組みも少しづつ進んできています。
目次
仮想通貨はどういうものなのか

仮想通貨はインターネット上の通貨(財産的価値)です。 ネットワーク上でなされる分散管理を用いてデータベースに取引記録を処理・記録するブロックチェーンという技術が使われています。ブロックチェーンは暗号化技術を応用したものであることから暗号通貨・暗号資産とも言われます。
仮想通貨の発行はマイニングによって行われる
ブロックチェーンは取引を記録したブロックをつないでいったものというイメージで、インターネット上のコンピュータによって分散管理されています。この一つ一つのブロックが正しいものかどうかを 暗号化技術を使って確かめる作業をマイニングと呼び、マイニングを行った人に対して新たに発行された仮想通貨が報酬として支払われます。ほとんどの仮想通貨はプログラムであらかじめ発行枚数が決められています。
仮想通貨は法定通貨ではない
このような仕組みを持つ仮想通貨は、国家による信用の裏付けがある法定通貨とは異なり、日本で言えば日本銀行のような中央管理者が存在しません。取引所を介して売り買いされる仮想通貨は投機的な要素の大きい投資対象として、需給関係により大きく価格が変動します。
仮想通貨の市場規模
2009年に誕生したビットコインが世界で初めての仮想通貨です。以降ビットコインと同様な仕組みをもった仮想通貨がいくつも発行され、2018年時点で1,596種以上の仮想通貨の種類があると言われています。ビットコイン以外の仮想通貨はアルトコインと総称されます。
世界で最も取引されている仮想通貨はの時価総額は27兆4,339億円(2018年3月31日時点)、最も時価総額の高いビットコインが、時価総額16兆円、取引金額2.7兆円(2019年6月時点)という規模です。
日本国内では、2018年12月時点の仮想通貨の取引金額は9兆1,900億円にのぼり、仮想通貨を利用する人の口座数は287万口座となっています。
※上記金額・数値は一般社団法人日本仮想通貨交換業協会資料による
日本における法的規制
仮想通貨が普及してきたなかで、仮想通貨取引所でのハッキング事件、マネーロンダリングやテロ資金の調達に利用される例があることなどから、2017年に資金決済法のなかに仮想通貨についての項目が追加され、 法定通貨と仮想通貨の交換を行う交換所が登録・免許制となりました。
資金決済法に定められた仮想通貨の定義はおおむね以下のようなものです。
1号仮想通貨
- 商品・サービスの購入の対価として支払いができる
- 外国通貨を含む法定通貨と交換ができる
- コンピュータで記録・移転される
- 通貨建て資産ではない
2号仮想通貨
- 1号仮想通貨と交換できるもの
1号仮想通貨の内容は、通貨・資産として価値を持っているという点と、特定の発行者が認めた範囲のみで流通するもの(電子マネーやゲーム内通貨)は仮想通貨にあたらないという点です。
2号仮想通貨は1号仮想通貨とのみ交換可能なものという位置づけです。2号通過とアルトコインは同義ではありません。
仮想通貨の時価総額ランキング
各仮想通貨の取引価格と時価総額はいくつかの仮想通貨情報提供サイトで確認することができます。主要なサイトは以下のものがあります。
TradingView

仮想通貨以外にも為替、株式、金などさまざまな投資銘柄の価格動向を見ることができるチャートサービスサイトです。
CoinMarketCap

仮想通貨のランキングサイトで、時価総額によるランキングを見ることができます。
みんなの仮想通貨

国内では最大級の仮想通貨ポータルサイトです。レートや時価総額ランキングのほか各銘柄のチャートを一覧できるページなどがあります。
投資としての仮想通貨

仮想通貨は決済通貨としての普及の兆しはあるものの、株式投資のようにキャピタルゲインを目的する投資対象として仮想通貨取引所・販売所での取引されるものが大きな割合を占めています。
主要な仮想通貨銘柄は?
時価総額上位5銘柄は以下のものです。
銘柄(ティッカー) | 時価総額 | 一般的な性格・信頼性確保の仕組み |
---|---|---|
ビットコイン(BTC) | 15兆8,230億円 |
|
イーサリアム(ETH) | 2兆1,028億円 |
|
リップル(XRP) | 1兆2,855億円 |
|
ビットコインキャッシュ(BCH) | 4,493億円 |
|
ライトコイン(LTC) | 3,895億円 |
|
- ※時価総額は2019年10月9日時点の「みんなの仮想通貨」表示の価額
- ※「一般的な性格・信頼性確保の仕組み」は一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨概要説明書」から抜粋
国内主要仮想通貨 取引所別取り扱い銘柄
仮想通貨の売買は販売所、または、取引所を通じて行います。ともに仮想通貨交換業者ですが、交換業者が仮想通貨を売っているのが販売所、交換業者が仮想通貨取引の仲介を行っているのが取引所です。
取引所での売買は株取引と同様に売値と買値を突き合わせて売買を成立させるため、流動性が小さい仮想通貨 は買いたい時に買えない、売りた置いときに売れないといったことも起こりえます。それに対し販売所は確実に希望の数量を売買することができますが、販売所の手数料が加わるためスプレッド(買値と売値の差額 )が大きくなります。
大手の交換業者は販売所、取引所の両方のサービスを行っているところもあり、状況に合わせて使い分けができます。
主な取引所別の仮想通貨取扱銘柄は以下のとおりです。
GMOコイン | bitFlyer | CoinCheck | DMM Bitcoin | Liquid | |
---|---|---|---|---|---|
ビットコイン(BTC) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
イーサリアム(ETH) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
リップル(XRP) | ◯ | - | ◯ | ◯ | ◯ |
ビットコインキャッシュ(BCH) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ライトコイン(LTC) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | - |
上記以外 |
|
|
|
|
投資については以下の記事もご覧ください。
決済手段としての仮想通貨

投資として認知されているのが仮想通貨の現状ですが、決済手段としての活用についてもさまざまな試みが行われています。具体例と課題を取り上げます。
決済手段としての活用事例
一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の資料によると、ビットコインを決済手段として利用可能な店舗数は14,969店舗(全世界,2019年9月6日現在)あります。
国内では2017年4月から家電量販店ビックカメラがbitFlyerの口座保有者を対象としたビットコインでの決済を開始したのをはじめとして、旅行会社HISがbitFlyerと共同でビットコイン決済を9拠点で開始を発表しています。
それ以外にも「Bitcoin日本語情報サイト」でビットコイン決済対応店舗がまとめられており、通信販売74件、実店舗262件が掲載されています。
決済通貨としての普及可能性・課題
仮想通貨はクレジットカードなどのキャッシュレス決済と比較し、加盟店手数料などコスト効率が良いこと、送金処理に時間がかからないことなどがメリットとしてあげられます。
それに対し、
- 決済手段として使うには、法定通貨と比べて価格変動リスクが大きすぎる
- 国内の店舗やサービスの決済手段は50%程度を占めており、キャッシュレス利用者の割合が低い
- 既に使われている交通系、商業系などの電子マネー以上のメリットが現状のところない
- マウントゴックス事件やDAOの盗難事件などセキュリティ面での信頼性
- 取引が膨大になりブロックチェーンに記録する取引履歴が増加するにつれて、ネットワークの回線容量や記憶装置の容量を莫大に消費する
といったことが普及が進まない要因としてあげることができます。
消費増税に合わせて進められているキャッシュレス化の動きのなかで、リクルートライフスタイルによる「Airレジ」はビットコインでの決済も可能となっています。既に国内26万店舗に採用されており、今後のキャッシュレス化の進展とともにビットコイン決済普及の下地になる可能性を秘めています。
資金調達手段としての仮想通貨

資金調達のための手段として仮想通貨を活用するのがICOと言われる方法です。仮想通貨の上場を見越して資金を集める仕組みですが、問題も多いことから新たな手法も生まれてきています。
ICOについて
ICO(Initial Coin Offering)は新しい仮想通貨を発行して取引所に上場させることで資金を調達する方法で、イメージはIPO(新規株式公開)と同じです。ICOを行う主体は仮想通貨を使った新しいサービスやプロジェクトを開発し、それに必要な資金を投資家から募り、新しい仮想通貨と交換可能なトークンを販売します。
ICOを行った仮想通貨が上場して新しいサービスが成功すれば、新しい仮想通貨の価格が上がり、投資家は安く買ったトークンで値上がりした仮想通貨を手に入れることができるという仕組みです。
ICOの課題とSTO、ILP
ICOは仮想通貨を投資家に販売するための 、IPOの場合の証券会社のような、 仲介者が不要で、直接資金を調達できます。また、投資家サイドにとっては少額から投資が可能で個人でもICOに参加できることが魅力です。
しかし、ICO主体と投資家の双方にとって資金のやりとりの敷居が低いこと、新仮想通貨が上場できる完成度の高い事業案件が少ないこと、そのために詐欺に利用されるなど問題が多く、規制やルールづくりの論議が高まってきました。
これに対し、ICOトークンに議決権や利益配分などを投資家に与える仕組みを取り入れたSTO(Security Token Offering)や、スマートコントラクトを活用し投資家に法的拘束力を課した融資契約とするILP(Initial Loan Procurement)といったICOの課題を解決する資金調達手段が現れてきています。
この記事の情報は2019/10/09時点のものです。
]]>